日別アーカイブ: 2013年2月2日

「たこ満」視察と倉敷東部センターの『感動創造プロセス』の取り組み

 1月30日、静岡県掛川市にある「たこ満」という和洋菓子の製造販売を手掛ける会社を視察した。「日本でいちばん大切にしたい会社」著書の坂本光司法政大教授の研究室にも関わっている藤井正隆さんが書いた「感動する会社は、なぜすべてがうまく回っているのか?」という本に紹介されている会社である。藤井さんは、第3回分会代表者会議で組織分析の報告をしていただいた松島紀三男氏が専務を務める㈱イマージョンの社長である。その藤井さんが、“感動企業”として紹介してるのがこの「たこ満」である。

 私が「日本でいちばん大切にしたい会社」を読んで、理念経営と呼ばれるその経営のあり方を知って以降、おかやまコープに必要なのはこの経営のあり方だと確信を持っている。しかし、それでも本当に本に書かれてある通りに従業員がなにより大切されている経営が実践されているのかどうか、いくら従業員(とその家族)を大切することこそが重要だとは言っても、実際は競争の中で経営しているのであり、従業員よりも経営数値を優先してしまう場面があるのではないか、従業員自身の満足度も他企業よりは高いにしても、実は様々な不満が渦巻いているのではないかという疑念は捨てきれなかった。だから実際に聞きに行ってみようということになったのである。
 結論から言えば、視察は平松さんという相談役(社長の奥様)と3時間半にわたって懇談できたものの、従業員の方と時間をとっての懇談はなく直接従業員の方の声は聞けなかったため、その疑念が完全に払しょくされたとは言えないかもしれない。しかし、平松相談役の話、対応してくれた従業員の方々、昼食をとった甘味処の従業員の方々の対応や表情などを見るにあたり、嘘ではないと気持ちで感じることができたのは事実である。
 さて、今回の訪問は、現在生協労連の生協政策委員会でマネジメント問題をテーマに議論している私たちのグループで、「日本でいちばん…」などで実際に従業員を何よりも大切にするマネジメントが行われていると紹介されている企業を、実際にこの目で見て見ようと訪問したものだ(前述の動機も含めて)。そして、平松相談役との懇談も、どうやってそういうマネジメントや組織風土、従業員満足度を高める取り組みを進め、定着させてきたのかという話に終始した。そしてそのいくつかの手法として、“ありがとうカード”や一人ひとりが作る“経営計画書”、従業員が毎日書く日報に対して社長がコメントを書き発行する“デイリーニュース”など様々な取り組みが紹介された。今、挙げた例は特徴的な取組みの一部でしかないが、様々な場面で企業の理念や社長の想い、部署間のコミュニケーションや顧客からのクレームを含む意見や感謝の声などが共有化される仕組みを持ち、その顧客や従業員の声が意見として活かされる仕組みが作られているのである。
 ここまで言うと、うちでもやってるって言われそうだ。確かに、おかやまコープでも似たようなことを取り組んでいる。例えば、ありがとうカードの取り組みは、以前労組の提案でDCで実施されているし、経営計画書は、うちでいう“私方針”のようなものだ。でも、おかやまコープの従業員満足度が「日本でいちばん…」に紹介されてもいいと思えるだけ高いと言える自信はない。何故か…、これが私の今一番のテーマである。
 私自身の結論は、結局経営者の姿勢にあると思ったわけだが、そう思わせる一つの理由が3時間半もの長時間にわたって、平松相談役から色々なお話を伺わせていただいたが、遂に最後まで「だから売り上げが伸びた」というたぐいの話は一切出てこなかったということだ。もちろん「売り上げが好調な理由はなんですか?」という聞き方はしなかったのだから当たり前かもしれない。だけど普通の経営者なら、「こんな風に従業員満足を高める取り組みをやったから、こんなに売り上げが上がりました」とか言いそうではないか?でも、そうではないのだ。数字の話は一切出てこず、そういう取り組みによって従業員自身やその家族、あるいは従業員が接客した顧客から感謝の声をもらったとか、そういう話ばかりを目を細めて語られるのである。
 うちの経営者は決してそうではない…というか、仮にそう思っていたとしても現場ではそういう運営にはなっていない。つまり、いくら経営者がいいことを言っても、「結局は数字挙げて来いってことだろ」という受け止めになっているということだ。おそらく、経営者の言ってることとやってることが一致しているという風に見えていないからなんだろうと思う。そう思わせている実例は至る所に落ちているが、さて…
 実は先日の週報で、倉敷東部センターの『感動創造プロセス』の取り組みが紹介されていた。ディズニーや豪華客船飛鳥の経営本から学んだ担当者が提案し始めたことだそうだ。内容はまさに「たこ満」のありがとうカードと同じである。とても素晴らしいことだし、これがきっかけになって組織風土が変われば言うことはない。しかし、これもやはり経営者(あるいは事業所長や事業統括)の姿勢が良きにも悪しきにも方向を決定づけるのである。担当者らの取り組みだと上から目線で眺めているだけ(やらせているというスタンス)では全く意味はない。一番大切なのは、経営者が全従業員(パートやアルバイト、委託は派遣まで含む)に対し、まずは「頑張ってくれてありがとう」のカードを一枚一枚書いて手渡すことが重要だし、事業所長がその所属職員全員に感謝のカードを書き手渡すことが始まりでなきゃだめだ。でないとこの取り組みも、最後はやらされ感だけで終わるだろう。今のところ、そういう風には見えないが、言われて気づく程度であっては話にもならない。この取り組みは、しばらくは注目である。
 最後に、そういう取り組みも始まりつつある中、労組でもこうした感動企業への視察を企画してみようと思う。そして、この春闘ではこうした考え方を生かす交渉はまだ難しいかもしれないが、先の組織分析の結果も踏まえながら年中の取り組みとして継続して論議し、視察し、政策提案にいかしていけるような形にしていきたいと思う。その時は、多くの仲間の積極的な参加を期待したい。

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