「たこ満」視察と倉敷東部センターの『感動創造プロセス』の取り組み

 1月30日、静岡県掛川市にある「たこ満」という和洋菓子の製造販売を手掛ける会社を視察した。「日本でいちばん大切にしたい会社」著書の坂本光司法政大教授の研究室にも関わっている藤井正隆さんが書いた「感動する会社は、なぜすべてがうまく回っているのか?」という本に紹介されている会社である。藤井さんは、第3回分会代表者会議で組織分析の報告をしていただいた松島紀三男氏が専務を務める㈱イマージョンの社長である。その藤井さんが、“感動企業”として紹介してるのがこの「たこ満」である。

 私が「日本でいちばん大切にしたい会社」を読んで、理念経営と呼ばれるその経営のあり方を知って以降、おかやまコープに必要なのはこの経営のあり方だと確信を持っている。しかし、それでも本当に本に書かれてある通りに従業員がなにより大切されている経営が実践されているのかどうか、いくら従業員(とその家族)を大切することこそが重要だとは言っても、実際は競争の中で経営しているのであり、従業員よりも経営数値を優先してしまう場面があるのではないか、従業員自身の満足度も他企業よりは高いにしても、実は様々な不満が渦巻いているのではないかという疑念は捨てきれなかった。だから実際に聞きに行ってみようということになったのである。

 結論から言えば、視察は平松さんという相談役(社長の奥様)と3時間半にわたって懇談できたものの、従業員の方と時間をとっての懇談はなく直接従業員の方の声は聞けなかったため、その疑念が完全に払しょくされたとは言えないかもしれない。しかし、平松相談役の話、対応してくれた従業員の方々、昼食をとった甘味処の従業員の方々の対応や表情などを見るにあたり、嘘ではないと気持ちで感じることができたのは事実である。

 さて、今回の訪問は、現在生協労連の生協政策委員会でマネジメント問題をテーマに議論している私たちのグループで、「日本でいちばん…」などで実際に従業員を何よりも大切にするマネジメントが行われていると紹介されている企業を、実際にこの目で見て見ようと訪問したものだ(前述の動機も含めて)。そして、平松相談役との懇談も、どうやってそういうマネジメントや組織風土、従業員満足度を高める取り組みを進め、定着させてきたのかという話に終始した。そしてそのいくつかの手法として、“ありがとうカード”や一人ひとりが作る“経営計画書”、従業員が毎日書く日報に対して社長がコメントを書き発行する“デイリーニュース”など様々な取り組みが紹介された。今、挙げた例は特徴的な取組みの一部でしかないが、様々な場面で企業の理念や社長の想い、部署間のコミュニケーションや顧客からのクレームを含む意見や感謝の声などが共有化される仕組みを持ち、その顧客や従業員の声が意見として活かされる仕組みが作られているのである。

 ここまで言うと、うちでもやってるって言われそうだ。確かに、おかやまコープでも似たようなことを取り組んでいる。例えば、ありがとうカードの取り組みは、以前労組の提案でDCで実施されているし、経営計画書は、うちでいう“私方針”のようなものだ。でも、おかやまコープの従業員満足度が「日本でいちばん…」に紹介されてもいいと思えるだけ高いと言える自信はない。何故か…、これが私の今一番のテーマである。

 私自身の結論は、結局経営者の姿勢にあると思ったわけだが、そう思わせる一つの理由が3時間半もの長時間にわたって、平松相談役から色々なお話を伺わせていただいたが、遂に最後まで「だから売り上げが伸びた」というたぐいの話は一切出てこなかったということだ。もちろん「売り上げが好調な理由はなんですか?」という聞き方はしなかったのだから当たり前かもしれない。だけど普通の経営者なら、「こんな風に従業員満足を高める取り組みをやったから、こんなに売り上げが上がりました」とか言いそうではないか?でも、そうではないのだ。数字の話は一切出てこず、そういう取り組みによって従業員自身やその家族、あるいは従業員が接客した顧客から感謝の声をもらったとか、そういう話ばかりを目を細めて語られるのである。

 うちの経営者は決してそうではない…というか、仮にそう思っていたとしても現場ではそういう運営にはなっていない。つまり、いくら経営者がいいことを言っても、「結局は数字挙げて来いってことだろ」という受け止めになっているということだ。おそらく、経営者の言ってることとやってることが一致しているという風に見えていないからなんだろうと思う。そう思わせている実例は至る所に落ちているが、さて…

 実は先日の週報で、倉敷東部センターの『感動創造プロセス』の取り組みが紹介されていた。ディズニーや豪華客船飛鳥の経営本から学んだ担当者が提案し始めたことだそうだ。内容はまさに「たこ満」のありがとうカードと同じである。とても素晴らしいことだし、これがきっかけになって組織風土が変われば言うことはない。しかし、これもやはり経営者(あるいは事業所長や事業統括)の姿勢が良きにも悪しきにも方向を決定づけるのである。担当者らの取り組みだと上から目線で眺めているだけ(やらせているというスタンス)では全く意味はない。一番大切なのは、経営者が全従業員(パートやアルバイト、委託は派遣まで含む)に対し、まずは「頑張ってくれてありがとう」のカードを一枚一枚書いて手渡すことが重要だし、事業所長がその所属職員全員に感謝のカードを書き手渡すことが始まりでなきゃだめだ。でないとこの取り組みも、最後はやらされ感だけで終わるだろう。今のところ、そういう風には見えないが、言われて気づく程度であっては話にもならない。この取り組みは、しばらくは注目である。

 最後に、そういう取り組みも始まりつつある中、労組でもこうした感動企業への視察を企画してみようと思う。そして、この春闘ではこうした考え方を生かす交渉はまだ難しいかもしれないが、先の組織分析の結果も踏まえながら年中の取り組みとして継続して論議し、視察し、政策提案にいかしていけるような形にしていきたいと思う。その時は、多くの仲間の積極的な参加を期待したい。

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「たこ満」視察と倉敷東部センターの『感動創造プロセス』の取り組み への7件のフィードバック

  1. スマイル のコメント:

    「売り手発想の最たるもの」を考える人たちが、事あるごとに
    「組合員に対するお役立ち」を声高々に主張するのは何故でしょう?
    「思想」と「実際に口にすること」が、これほど乖離した人々を私は知りません。

    それはともかく、2月11日に爆発するはずだった加入が、実際は
    本部の事務処理能力の関係で、即受注日に合わせて加入用紙を
    転送することになりました。
    加入日付は再び改ざんされることになった訳です。
    そこまでして加入の溜め置きをせんといけんものなのか?

    キャンペーンを辞めない理由は、基本的に生協は、競争原理を
    事業の根幹においているからですね。
    そこにおいて最重要事項は、「人を出し抜く」力となります。
    陸上競技で例えれば、「だったら人より早くスタートすれば
    いいじゃん」という発想になります。
    (実際に陸上競技でこれをやると、フライイングで即失格になりますが。)
    そうやってみんなでフライイングしている内に、WCの開始時期
    はいつしか1月からになった訳ですね。
    しかしフライイングは、「人を出し抜きたい」人が一人でやってこそ意味が
    あるもので、「みんなでフライイングをやる100m走」がまるで無意味で
    あることは言うまでもない。(この無意味さを自覚した生協は、既にキャンペーン
    を辞めている訳です。)
    「あーにしてんだ?おまいら」と、外から見ている人は笑うでしょう。

    別に私は、競争原理を否定している訳ではありません。
    でも肝心なことが分かってない。
    陸上競技を思い浮かべてみれば分かる通り、
    「他の人を出し抜く能力(フライイング)」は、
    「実際に速く走る能力」とは無関係である、という事実です。

    それにしても、組織の全員が、「他の人を出し抜く」事を
    考える組織って、どう考えても成り立たないよね。
    だって「他の人を出し抜く」には、「出し抜かれる(大勢の)人々」が
    いることが前提だから。

  2. スマイル のコメント:

    本部の基本方針は、加入の取り置きはしない、ということらしいです。
    でも現場は、キャンペーンのためなら、供給は犠牲にすべし!で動いています。
    赤字に転落しそうでも、役員の方々はあまり困ってないみたいですねえ。
    私自身は、加入の取り置きは供給の低下に繋がるので、とても疚しい気分になっていました。
    でも他の人に聞いてみると、案外そんな事誰も気にしていませんでした。
    生協職員の役割とは、「生協の経営を守る」事であると信じて疑いませんでしたが、今では大きな間違いであったと反省しています。
    そんな大きい事を考えるから、加入の取り置きに、疚しさを感じてしまうんですね。
    これからはワーカー(労働者)らしく、目先の数字を追うことだけに専念しようと思います。

    • 暴言誇示 のコメント:

      確かに、この組織はそんな労働者を求めているとしか思えない。

      • nishizaki のコメント:

        うう、“いいね”したいけど、コメントにはその機能がないんだよね…残念!

  3. 暴言誇示 のコメント:

    結局、数字なんだよね。利用人数と言われれば牛乳1本やたまご1個の注文書を集め、登録商品と言われれば「注文のときに0を書けば良いから」と言って取りあえず登録数を上げる。加入を上げるために班配なのに個別に配るとか、キャンペーン前に取り置きするとか。

  4. ハシシタ のコメント:

     2月11日よりウェルカムキャンペーンが始まります。今回も「加入用紙」の取り置きがセンターによっては既に2~30あるらしい。あと1週あるので、その数はさらに増えるでしょう。
    このホームページでも何度か語られたこの悪しき慣習が改善される気配はありません。違法行為だという書き込みもありましたよね。
     解決策なんて簡単なことじゃないですか?
    ①組合員向け特典を年中キャンペーンと同一にする
    ②キャンペーンとキャンペーンの間の加入・移管の実績数値を目標から差し引く
     例えば、秋のキャンペーン終了後加入が5あれば、春のキャンペーン目標30を2 5でいいことにする。
    即利用もしてもらえて供給にも貢献する。特典の有無を気にすることもない。

     2013年度の宅配部門のテーマは「パラダイムシフト」だそうだ。
     このキャンペーン至上主義の行方はど~なるでしょう?

     倉敷東部センターの2月11日”付”の加入数が見ものですね。

    • nishizaki のコメント:

      まだやってんですね、取り置き…。だからキャンペーンなんてやめちまえばいいんですよ。売り手発想の最たる手法ですね。ばかばかしい。

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