性善説と性悪説…人の力が発揮されるのはどっち?

 面白い話を聞いた。8/24~25に東京で開催された生協労連中央執行委員会。9月に定期大会を控え、年度最後の中執だ。そういうわけで、24日の夜は1年間の慰労会が開かれ、その場で聞いた話…(その後2日目の議事では東海地連から報告もされた)。とある生協…事業連合の話だが、いずれおかやまやCSネットもそうなるのかもと思うと、暗澹たる気持ちになった…。

 “とある事業連合”とは、関東方面の事業連合で震災前にコープネットと統合を進めようとしていた事業連合である。そう、“You Tube”に似た名前のところだ。話は4つ、皆さんはどう感じられるだろうか??

①恐怖のタコグラフ
 昔、私も入協したてで配達をしていた頃、トラックにタコグラフというものが付いていた。トラックの運行記録で時間の経過と車速が記録されるのだ。配達から帰ると日報にグラフをつけ、スピードが出ていると「スピードの出しすぎだ」などと叱られたものである。運送業にはよくある話で、今でもそうした会社は多いだろう。これを導入する理由はほぼ間違いなく安全運転の奨励(スピードの抑制)のはずだ。中には、“サボり”をチェックするためというのもあるかもしれないが…。
 とある事業連合のそれは、これが更に進化したものだ。なんと、リアルタイムでタコグラフ情報が本部(?)に転送され、時速60Kmを1Km/hでも越えた瞬間、「今1Km超過したぞ!」という趣旨の電話やメールが飛んで来るそうだ。その監視専門の職員も配置されているらしく、その度に担当者は電話やメールをチェック…、んん?運転中に?その方がもっと危ないンとちゃうやろか…?!っていうより、ここは北朝鮮かぁ?

②壁に耳あり障子に目あり…恐怖の監視?カメラ
 タクシーなどに導入されている運行記録ビデオをご存知かと思う。悪質な客からの犯罪防止や事故の記録を目的に導入されている車載ビデオである。この事業連合では、すべての車両ではないらしいが、このビデオが搭載された車両が何台かあるらしい。もちろん、導入目的は事故の記録だそうだ。
 ところがこのビデオシステム、車両にちょっとしたショック(道路の段差など)があると、その前後の時間の映像が保存されるようになっているらしく、ショックがあるたびに何でもない運転手のしぐさなどがすべて記録され残されるそうだ。話に聞くと、タバコはもちろん、女性が汗で乱れた化粧を直す様子(これが何故残っているのかは少し疑問も残るが…)まで残っているそうだ。これでは事故の記録ではなく“自己”の記録である。

③効率化の極致!マップシステム進化系
 これはまだ検討中のものらしいが、効率化もここまで行くと一体…と思ってしまうような話だ。おかやまのマップシステムはまったく役に立っていないとのご批判も強いので、想像も出来ないかもしれないが…。つまりこんな感じ…、毎日毎日、その瞬間にいちばん効率のよいコースをマップシステムで作成し、その通りに配達に行くといったもの。新しい個配利用者(もしくは班)やその日の利用状況によって、事実上毎回(毎週)異なるコースになるようだ。相手の都合も出来るだけ配慮するということではあるらしいのだが、そんなシステムが可能なのかどうか…それは良く分からない。ともかく、効率重視のみで発想されているのは間違いなさそうだ。利用者から見れば、毎週違う担当者が違う時間に配達に来るということになるかもしれない。

④朝晩二回の酒チェック
 最後の話は、アルコールチェッカーの話。飲酒運転の事故が大きな社会問題として取り上げられる中、アルコールチェッカーを導入する運送業界は少なくない。もちろん、飲酒運転はどんな理由があろうと絶対に許されない。だから朝の運行前にチェックすることは理解できる。しかし、運行を終えて事業所に帰ってきてから再度チェックすることが果たして必要だろうか。話に聞くと、昼休みに一杯やった担当者(?)がいたらしく、夕方のチェックも始まったそうだ。それなら仕方がない…とお思いか?いやいや、ちょっと待って。確かに昼休憩時に一杯やったヤツは許されない。しかし、チェックの本来の目的は“犯人探し”ではなく、飲酒運転の防止のはずだ。夕方のチェックでは、“防止”になっていない。もっとも、「夕方にチェックされるから昼は飲酒しない」などというタガをはめる事は出来るかもしれないが、それでは“見つからなければいい”という風潮を助長するだけのように思う。

 さて、①にしても②や④にしても、それをやろうとした動機はそんなに不純なものではなかったかもしれない。しかし、その根底には“管理・監視していないと何をやらかすか分かったモンでない”という担当者“性悪説”に基づく発想があるように思えてならない。①でいえば、タコグラフでチェックするより、継続的な安全運転教育で啓発していくことの方が大切だし、イヤミを言えば、タコグラフで休憩時間が1時間取れていなかったらそれへの対策はきちんとしているのかと反論したくなる。

 ②でいえば、本当に事故の記録が目的なら車両の前方を写すだけで十分だし、少なくとも運転手を写す必要はないのではなかろうか。録画保存された画像の行方がどうなっているのかは不明だが、タコグラフが本部に直通していることを考えれば、保存画像もリアルタイムで送信されている可能性も想像できなくはない。女性の化粧直しなんて話も出てくること自体、それを疑わせるものだ。事故がなければ転送される前にすべて消去されることになっているのならまだしも…。

 ともかく、人がその組織に愛着や帰属意識を持ち、その組織のために力を発揮する最大の要素は、その組織から信頼されているということを実感できるかどうかである。相手から自分は信頼されていないと感じている時に、その相手に対して何か貢献しようなんて気持ちが生まれようはずがない。
 生協組織の特徴として、何かをするときの動機はまっとうでも、いざそれが運用されれば、その動機から大きくずれて運用されることが往々にしてある。つまり、そういう組織風土になっているからだ。
 さて、生協という組織は、いつそのことに気づくのであろうか…。

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性善説と性悪説…人の力が発揮されるのはどっち? への2件のフィードバック

  1. ひまわり のコメント:

    職員を監視?するのって、信頼してない!!って宣言しているのと同じですよね。
    その職員を採用したのは自分達でしょうに。

  2. ハイサイおじさん のコメント:

    そんなことに金と手間をかけられる生協って、きっと経営的に余裕があって、労働条件も文句なしなんでしょうね。(もちろん嫌味です)

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