岡山県最低賃金13円アップ…の裏ばなし

 岡山県の今年の最低賃金は13円引き上げられ683円となり、11月5日より適用されることになった。実は、この13円が決められた審議の経過が11月14日付の山陽新聞に掲載された。この記事で紹介された内容は、私たち(県労会議)が労働局に対し審議の内容を明らかにするよう求めても明かさなかった事実である。当事者である私たち労働者にはなにも明かさず、新聞記者にはその内容を披歴する労働局の姿勢は許せないが、その内容はとても興味深いものだったので、以下紹介する。

 最低賃金は、毎年夏ごろに中央最低賃金審議会(厚生労働省の諮問機関で、労働者、使用者、有識者の三者で構成)が開かれ、最賃の改定幅の目安が議論され提示される。その目安をベースに、各都道府県の最賃審議会がそれぞれの地域の実情にあった(?)“地方最賃”の改定額を答申し、答申を受けた地方労働局が秋に改定額を決定する。今年の中央最賃審議会の岡山県の改定額目安は10円が提示された。 

 中央と同じように、地方の最賃審議会も労働者側委員と使用者側委員、それと有識者ら中立の公益委員の三者で構成されている。その岡山県の審議会…中央が示した岡山県の改定額目安は10円だったにも関わらず、貧困と格差、ワーキングプアが深刻な社会問題となったことを背景に、なんと労働者側委員は改定額19円を要求!(ホントはそれでもまだ不十分だが、結構頑張ってるじゃん!)。ところが、使用者側委員は地元中小企業の厳しい経営状況を理由に据え置きを主張し、結論が出ない状況が続く。そうした中、他県で相次いで12円や13円の改定額が決定され、岡山においても公益委員が13円を提示。使用者側はそれでも強く反発したが、最終的には多数決で労働者側委員、公益委員の賛成多数で13円が改定額と決まった。これまでの全会一致で決定してきた通例が覆された瞬間である。

 岡山県の使用者委員の一人は、「景気の動向にかかわらず賃上げが続くことを懸念」、「デフレや円高も影響し、将来的に経営が立ち行かなくなる中小企業もでてくるのではないか」と、最賃引き上げ答申に対し、雇用環境におけるマイナス面を強調する。しかし、事実は大きく異なる。岡山県労働局による県内の小規模な821事業所を対象とした調査では、6月現在で13円引き上げられた最低賃金の時給683円未満で働く労働者の割合は1.75%にしか過ぎない。つまり、13円引きあがっても、その恩恵を受ける労働者はごくわずかしかいないということだ。逆に、最賃を守れない中小企業が急増し、経営が立ち行かなくなるという主張にもほとんど根拠はないということだ。

 今年の最賃審議会では、全会一致の通例が覆され、13円というこれまでと比較すれば“大幅な”改定額となったことは、労働者側委員も一定程度の頑張りがあったと評価できる。しかし、岡山県の審議会を構成する労働者委員はずべて“連合岡山推薦”の委員である。今回の委員の頑張りも、連合自身が非正規労働者のことを無視できなくなっていることを示したものといえるだろう。しかし、最賃の影響をもろに受けるパートやアルバイトなどの非正規労働者の賃上げや雇用確保、地位と権利向上に先頭に立って奮闘している全労連(岡山県では“県労会議”)推薦の委員が一人もいないというのは大変問題である。ちなみに、連合と全労連のその組織人数で按分しても、全労連推薦の委員がその一角を占めても全くおかしくないのである。その傾向は全国でも同じで、ほとんどの地方最賃審議会の労働者委員は連合推薦委員が独占しているのが実態だ。

 最低賃金の大幅引き上げは、消費購買力を向上させ、くらしの改善と地域経済の活性化をもたらす。一方、その経済効果が社会全体に波及するまでは、最賃引き上げによる人件費コストが中小企業に及ぼす負担については十分配慮し、十分な対策を講じることも必要だ。これからの最賃引き上げ運動は、中小企業予算の増加と支援策の拡充、公正取引確立に向けた中小下請け企業関連の法改正や運用改善を求める運動を車の両輪として発展させていくことが必要なのである。

カテゴリー: TOPIXニュース, アルバイト部会, 定時職員部会, 書記局のつぶやき…(雑感) タグ: パーマリンク
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